『約束の森』 沢木冬吾
うう、文章書くの楽しい…。
仕事柄数字とばっかりにらめっこしているのでたまに文章書いてると楽しくて仕方ないですね。お客様に送るメールすら楽しいもの。
そんな話はおいておいて。
お次は沢木冬吾先生『約束の森』の感想です。
読んだ後にまず思ったこと。
「なんでもっと洒落たタイトルにしなかった担当!!」
でした。
いや、すごく面白かったんですよ。
主人公の奥野佑也はもと公安部の刑事。妻が殺害された事件がきっかけとなって刑事を辞め、その日ぐらしの生活をおくっていました。そんな彼が現職の公安課刑事・緒方から、とある組織を釣り上げるためのおとり作戦へ協力を依頼されるところから話が始まります。
人間への信用を失いかけていたドーベルマン・マクナイトやそれぞれ事情をもつ若者・ふみ、隼人と偽りの家族を演じるなかでそれぞれが変わっていく姿がとても前向きに書かれている…なんていうとあんまりにも普通にまとまりすぎて退屈ですかね。
でもこの作品はそれだけじゃないんです!(深夜のテレビショッピング風に)
この作品のおもしろいところは、そんな再生の物語と、巨悪に立ち向かうサスペンス的な展開が上手く融合していることです。
穏やかな家族としての生活シーンに対して、物語の本筋となる作戦に関わるシーンは結構過激かつグロテスクな要素も多くなっています。平穏な日常の裏側で自体は進行し、そして事件は起こってしまう…。
共に過ごしたことで起きた変化が或は成長が、事件の中で彼らに一体どのような行動をとらせるのか?
とにかく登場人物がみんなかっこいい!後たぶん読み終わったら犬が飼いたくなってる!
リアル(?)な刑事ものがお好きな方よりは、アクション映画のようなテンポのよいスリリングな作品の好きな方、裏組織とか聞くとワクワクしちゃう方、犬好きの方、かっこいいオッサンがお好きな方におすすめしたい小説です。
だれかいい脚本家と監督つけて映画化してくれないかなあ…
以下ちょっとだけネタバレ
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『大斬-オオギリ-』 原作:西尾維新 他
連投。
『十二大戦』を読んだ後に存在を知って購入しました。
お目当てはもちろん『十二大戦』の後日談『どうしても叶えたいたったひとつの願いと割とそうでもない99の願い』(漫画:中村光)。
私は中村先生も大好きなんですが、原作がついちゃうとあの独特のテンポがどうなっちゃうんだろ?という思いもありました。結論からいうと、中村先生らしくはない。あの雰囲気を期待するとちょっとがっかりしてしまうかも。
でも私はむしろビックリというか、やっぱり中村先生すごい!と思ってしまいました。
西尾先生の作品ってもういうまでもなくアクが強くて、小説だとそれが読者それぞれの想像に任せられることによって面白さにつながっていると思うんですけど、漫画っていう一目で見てわかる形にされてしまうと、結構くどく感じることがあったんですよね。
でもこのお話はすっと読めるというか、さらっと綺麗にまとまっていると思いました。あと忘れがちだけどやっぱり中村先生絵上手いよーもー。
『大斬』に興味を持っている方はもちろん『十二大戦』を読もうと思っている方も出来ればこちらから。なんでかというと、『十二大戦』自体が漫画の大きなネタバレになりかねないというか、漫画を素直に楽しむ邪魔になってしまう可能性があるんですよね…。最初読んだ時は「これ小説読んでないとわけわからないんじゃ?」って思ったんですけど、じゃあ小説の内容を知らなかったら?と考えるとむしろそっちのほうが漫画の意図を素直に汲めるというか…私なんでこっちの存在をしらんかったのっていうか。
もちろん他にも、西尾維新が普通の少女漫画かいてる!とかサムライうさぎかわいかったよね、とかパンチラとか巨乳萌えとかヤンデレとか幼女とか目白押しで普通に西尾維新ファンじゃない人が読んでも面白いんじゃなかなーと思える一冊でした。
個人的には『ジャングルはいつもハレのちグゥ』の金田一蓮十郎先生の『友達いない同盟』がいっちゃん好き。日常系ギャグ。
確かに死体が発見されないのは生存フラグ。
『十二大戦』 西尾維新
ブログに最初にのっけるのがこれってもうどこまでも真面目ぶれないんだな自分と思わざるを得ない。いや別に西尾維新が真面目でないということはないんだろうけども。
でも近々に呼んだ本といえばこれなので記憶が新しいうちに。
ヤングジャンプでの読み切り『どうしても叶えたいたったひとつの願いと割とそうでもない99の願い』(漫画:中村光)の前日譚。漫画はコミックス『大斬ーオオギリー』に収録されています。
「西尾維新原作の短編漫画集が大判で800円+税?買うっきゃねーな!」って方はぜひ漫画から。漫画読んでたほうがより楽しめ、さらにいうなら漫画は小説読む前のほうが楽しめます。ほんと。
西尾維新お得意の異能バトルもの。
干支十二家という家の戦士たちが十二年に一度集まって行われる十二大戦。勝ち残った一人はどんな願いでも叶える権利を手に入れる、その十二大戦が話の舞台です。
十二人も登場人物がいるので一戦一戦は結構短め。物足りないといえばそうなんですがさらっと面白く読める作品です。
それぞれの能力とその見せ方は皆さんお察しの通り、さすが読者を騙す気満々だよね西尾!という感じ。
(西尾先生の話を読むときに科学がどうたらということは気にしてはいけない、いいね?)
内容の自体は、なんというか「強いことが幸せとは限らない」「残虐な行いをする人間が人を愛してないかというと必ずしもそうではない」ってわりと西尾先生の作品によく含まれている要素だと思うんですけど、そこが割と強く出ている作品かなと思います。(それと同じくらい「どんな人間でも何をするかわからない」とか「強者に弱さがない訳ではない」っていうのも多いけど)
特殊な戦士たちの異常性ではなく通常性?にスポットが当たってる作品かなと。特に扉絵裏の人物紹介とか。
表紙は中村光先生でそちらのファンの方が買うこともあるのかなー。基本扉絵に表紙と同じイラストで一人ずつでてくるだけなんですが、よくよく見ると細部は手直しされていたり、そもそも漫画と全然デザインちげえじゃねーか!となったり楽しいです。個人的に卯の戦士のあの衣装はどこまで西尾先生の指定でどこから中村先生のアイデアなのかしりたい。とても。
キャラ萌えするもよし、切ない気持ちになるもよし、仲村先生のイラストを愛でるもよし。
西尾維新ファンから初心者(?)までおすすめできる作品でした。
しかしこんな人たちが各国で活躍してるっていったいどんな世界になってるんだ…
以下視点が腐る&ネタバレ注意
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